資源地政学的核燃料サイクル論改訂版2 小澤正基

論考【資源地政学的核燃料サイクル論】小澤r

核燃料サイクルの技術とシステムを資源地政学的視点から論考した。40元素400核種からなる使用済み核燃料(SF)は、核燃料のプルトニウム(239Pu)やウラン(235U)の他、白金族金属(PGM)、レアアース(REE)などのレアメタル、核医学用99Mo(⇢99mTc)などの放射性核種を含有する人工鉱石である。これらは国産の、いわば地政学的リスクフリーの“原子力レアメタル”であり、核燃料サイクルは“原子力マインパーク”である。原子力レアメタルの選鉱精錬法として溶媒抽出法及びUPD(Under Potential Deposition)触媒による電解採取法を例示し、PGM及びテクネチウム(Tc)の利用としてアルカリ水及び海水の電解による水素製造触媒への適用例を示した。4元素(Pd-Ru-Rh-Re)UPD電極 及び模擬高レベル放射性廃液から作成した多元系UPD電極は単味パラジウムUPD電極を最大5倍上回る高触媒活性能を示し、それらUPD電極ではパラジウムを核とした安定した粒状析出物の大きな比表面積とルテニウムリッチな組成が高触媒活性を担うとした。一方原子炉ではテーラーメードにレアメタルを創成することが可能である。中性子捕獲・β崩壊反応に基づいた元素変換効率、生成元素の比放射能及び戦略的価値などの指標において、19組の元素系よりプラセオジム(Pr)→ネオジム(Nd), テルビウム(Tb)→ジスプロシウム(Dy), テクネチウム(Tc)→ルテニウム(Ru), ロジウム(Rh)→パラジウム(Pd)の4元素系の優位性を明らかにした。資源性(Resourceability)に基づいた放射性廃棄物のトータルなリサイクル(Recycle)と核種・元素の変性(Metamorphosis)は既往核燃料サイクル概念にコペルニクス的転回(Kopernikanische Wende)を促す。原子力レアメタルの社会実装には、戦略的、経済的評価に加え微弱な放射線・放射能への謂れなき忌諱感(メンタル)の克服が必須であるが、SDGsに向けた自動車産業界におけるネオジム(Nd)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)など天然放射性レアアースの急速な利用拡大がこの新しい地平を切り拓く一つの道標となるのかも知れない。

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